ガソリン

過去のイメージと現代の実燃費の違い

かつてアメ車といえば、大排気量のV8エンジンを搭載し、ガソリン1ガロン(約3.8リットル)あたり15マイル前後(約6.4km/L)しか走らない“燃費ワースト”の代表格でした。
1970年代から2000年代初頭にかけては、馬力を重視した設計が主流で、高速巡航や街乗りでも燃料をガンガン使うイメージが定着しています。ところが最近では、排ガス規制や技術革新の流れを受け、小排気量直噴ターボエンジンやディーゼルエンジンが採用されるようになり、アイドリングストップ機能も一般的となりました。

たとえば、ミッドサイズSUVのガソリンモデルでもWLTCモード換算でリッター10〜12km程度、セダンでリッター12〜15km程度を実現する車種が増加しています。
ただし、これらはあくまでも日本基準(WLTCモード)での数値で、アメ車の多くはアメリカ環境保護庁(EPA)基準で表示されます。EPA基準で「30mpg(約12.8km/L)」と謳われる車両でも、WLTCモードに換算するとおよそ9〜10km/L前後になるケースがあるため、カタログ数値をそのまま比較せず、日本基準に換算して確認するのがポイントです。
また、シリンダー・デアクティベーションや可変バルブタイミングを活用することで、高速巡航時にはリッター15〜18kmをマークするモデルも登場しており、従来イメージとのギャップは確実に縮まっています。

ハイブリッドやEVモデルが変えるアメ車の燃費

最近のアメ車では電動化が加速し、HV(ハイブリッド)・PHV(プラグインハイブリッド)・EV(電気自動車)のバリエーションが急増中です。
たとえば、フォード「Escape Hybrid」はWLTCモードで約17km/Lを達成し、従来のガソリンモデル(WLTCで10〜12km/Lほど)に比べて20〜30%ほど燃費性能が向上しています。
プラグインハイブリッド版「Escape Plug-In Hybrid」なら、EV走行距離も確保できるため、市街地のストップ&ゴーでもガソリン消費を大幅に抑えられるのが魅力です。

また、F-150シリーズに追加されたEVモデル「F-150 Lightning」は、EPA基準で1充電あたり約370kmの航続距離を実現。日本導入車の場合はWLTC換算でおよそ300km前後とされ、家庭用電源で手軽に充電できる点もポイントです。
さらに、ジープ「Wrangler 4xe」「Grand Cherokee 4xe」といったプラグインハイブリッドモデルも日本向けに展開しており、EVモードとハイブリッドモードをうまく併用することで、燃料消費を抑えつつオフロード走行もこなせる仕様になっています。
テスラをはじめとするEV専業メーカーの台頭と合わせ、バッテリー性能や充電インフラが日々進化しているため、アメ車のEVモデルはますます実用性を高めているといえるでしょう。

日本市場の燃費評価基準とアメ車の相性

日本国内では、国土交通省が定めるWLTCモードやJC08モードで燃費を測ります。
これらは実際の走行条件に近い測定方法で、日本車や欧州車との比較がしやすいのがメリットです。一方、アメ車はアメリカのEPA基準で燃費を表示するため、同じ車両でも試験条件が異なり、数値にズレが生じやすい点に注意が必要です。たとえばEPAでは30mpg(約12.8km/L)と表記される車両でも、WLTCモードに換算すると9〜10km/L程度になるケースがあり、購入検討時には必ず日本基準に置き換えて比較することをおすすめします。

また、日本では排気量や車両重量に応じた自動車税・重量税がかかるため、維持費も検討材料に入れたいところです。仮に実燃費がリッター10kmで年間1万kmを走ると、1,000リットルのガソリンを消費します。ガソリン価格を1リットル160円とすると、年間燃料費は約16万円になり、経済的な負担は無視できません。
そのため、燃費性能が改善された現行アメ車でも、車種や装備、走行環境によって実燃費にはバラつきがあると心得ておくのが大切です。定期的なメンテナンスやタイヤの空気圧チェックで実燃費を維持しつつ、買い換えや選択時にはWLTC換算値を確認することで、日本でも十分選択肢に入るでしょう。